Damijan Podversic / ダミアン・ポドヴェルシッチ

現当主は、ダミアン・ポドヴェルシッチ。

彼の父は数haのブドウ畑とオステリアを持ち、栽培したブドウで造ったワインを店で売る、 当時はポピュラーなワイン造り。しかしそんな「当然な」ワインに満足せず、畑仕事が得意だった父について幼いころから栽培や醸造にのめり込んでいくことになる。ダミアンにとって一つの大きな出会いでもあるオスラヴィエのヨスコ・グラヴネル、きっかけはやはり父であった。 1985年、フリウリのワイン造りの「定説」に一石を投じたヨスコのもとには、多くの造り手が集まり(今では素晴らしい造り手ばかり、のちにそれぞれの価値観を持ち、離れていくことになる。当時の彼のカンティーナには溢れんばかりの熱意と信念、才能が集まっていた。)、濃密な時間を共に過ごすダミアンは、自身今までにないほど多くの事(本人曰く、技術的なことではなく、より内面的な部分で学ぶことの方が多かったという)を学び、自身のフィロソフィを築いていくこととなる。彼が父から離れ、本格的に栽培・醸造を開始したのは、 1998年、ゴリツィアの西にある放棄された畑(Monte Calvario)の畑を手に入れたことから始まる。

約6haのモンテ・カルヴァリオには樹齢60年を超えるリボッラジャッラをはじめ、マルヴァジア・イストゥリアーナ、フリウラーノを主にピノ・グリージョ、カベルネ・ソーヴィニョン、メルローを栽培。祖父から受け継いだサンフロリアーノの2haの畑にはシャルドネ、フリウラーノ、メルローを栽培。畑では年により必要最小限の銅と硫黄物を使うのみで、一切の肥料、薬品類を使用しない。さらには土壌の耕転さえも行わない。

春から夏にかけての徹底した除葉と摘房、果実の収量制限を行う。

また、収穫に至っては樹上に極限まで残し熟成を促す。結果、収穫は10月以降、雨が少なく条件が整った場合は11月に至ることも少なくない。コッリオ周辺特有の湿度の高さは、一定の条件を満たすことで、ボトリティス・ノービレ(貴腐)の恩恵を受けることができる。そうしてボトリティスをまとった白ブドウを収穫。畑での徹底的なこだわりと作業量の多さ(過酷さ)は、他のどんな造り手にも引けを取らないほど。

貴腐化した果実を含むため、非常に厳しい選果を行ってから除梗。縦型の開放式大樽 の中にてマセレーション(果皮の浸漬)を行いつつ、野生酵母にてゆっくりと醗酵が始まる。日々のパンチング・ダウン(浮き上がった果帽を突き崩す)を繰り返し、60−90日に及ぶ醗酵ののちに圧搾。圧搾後、大樽にて約2年、瓶詰め後12ヶ月(2009年以降樽内での熟成を優先するようになる)を行う。モンテ・カルヴァリオの持つ強烈なミネラル感、完熟した豊かな果実、そして全く失われることのない骨太な酸、ここにボトリティスの恩恵を受けた彼のワインは、豊かさと旨みはもちろんの事、他のいかなるワインとも異なる個性を持つ。

彼のワインには2つの表情(ヴィンテージごとに見せる顔)がある。特に彼にとって印象的、というより過酷過ぎる収穫(冷夏と多雨、収穫前の雹によって約8割の収獲を失ってしまう。 残った果実にも傷がつき、収穫は房ごとではなく粒単位での収穫を余儀なくされた年)は、彼にとっての今後を、はっきりと示すこととなる。寒い年、雨の多い年にはボトリティスの恩恵を強く受けることで、表面的な味わいというより、より奥深い、ポテンシャルを感じるワインになる。それに比べ、気候に恵まれ果実的な熟成を遂げたヴィンテージには、非常に素直さ、明るさ、親しみやすさを持ち、豊かな飲み心地を持ったワイン。こうした二つの表情、大きな変化、その背景には彼自身の成長・変化をはっきりと感じることができる。 「ヨスコから学んだものはブドウ作りや醸造方法じゃない、もっと大切なものだ。生きる上での価値観やフィロソフィ。大地、植物、 すべての小動物、一体化した自然環境に最大限の敬意を払うこと。妻、そして家族を愛すること。そして自ら経験しなければ、何 一つ学べないということだ。」

2012年に起きた「ある出来事」を境に、ヨスコのところに通わなくなったダミアン。当時はちょっとしたすれ違いだったかもしれません。 しかしヨスコを信じ切っていたダミアンが、彼の考えとすれ違うこと自体、当時としては珍しい事だったなんて、その時は気づきもしませんでした。「それまではヨスコの言葉、行う事すべてに注目し、それが絶対的なものだと信じてきた。畑での仕事や土地との付き合い方。収穫の時期なんて毎日のように彼に電話していたさ。だけど今考えれば、自分自身で考えること、決める事を放棄していたんだ。」、彼を尊敬するあまり、自分の考えよりも、ヨスコの意見を優先していたという彼。そして彼のもとを離れ、今まて抑えこんできた自分の意志、考えを表に出すようになったのが2012年。多くの事をヨスコのもとで学んできたダミアン、それを自分の中で咀嚼し理解する。単なるモノマネではなく、自分自身の意志として。言葉では簡単に思えますが、それまで30年近く師として、時には父親のように慕ってきたヨスコから離れることに、どれだけの決意が必要だったか。

その2012年は、ダミアンにとって「偉大」と言える素晴らしい収穫を迎える事になりました。樹上で果実は十分に成熟し、貴腐がたっぷりと回ったリボッラジャッラ。収穫を遅らせても、果実的なバランス感を失わなかった果実は、雨が多かったこともあり、貴腐の量は全体の50−60%に及びます(一部のリボッラにおいてはほぼ100%に貴腐が回ったそう)。醸造については今までと変わらず大樽によって、果皮・種子全てを表現した醗酵。熟成においては、今までより樽での熟成を長く取りました。ボトル詰めから今回のリリースまで5年という歳月を費やした、ダミアン渾身のヴィンテージとなります。 ヨスコとの出会い、別れを経験したダミアン。リボッラ2005という記念すべきヴィンテージのリリースを迎えた彼は、また一つ歩を 進めたかのように思う。彼自身の成長はそのままワインの成長につながる、常に前へ進むことを忘れない、尊敬すべき造り手。

(以上、輸入元資料より引用し、誤記など微修正)

ダミアン

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