ヴェルリッチ / ヴェルシュリースリング・フォン・オポック 2021

A1118

5,600円(税込6,160円)

[造手] Weingut Werlitsch / ヴァイングート・ヴェルリッチ
[銘柄] Welschriesling Vom Opok / ヴェルシュリースリング・オポック
[国] Austria / オーストリア
[地域] Steiermark / シュタイヤーマルク州, Süd Steiermark / ズュート・シュタイヤーマルク
[品種] Welschriesling / ヴェルシュリースリング
[タイプ] 白 / 辛口 / ミディアムボディ / 酸化防止剤無添加
[容量] 750ml

<栽培:Edited by essentia>
土壌:brown clay on chalky marl-オポック。標高330-450m、傾斜率:25-40% (EX VERO I の区画) 、南東、南、南⻄向き。植樹:1971年、2500樹/ha、23hl/ha。

<醸造:Edited by essentia>
9月末に手摘みで収穫。除梗し軽く破砕し夜間に搾汁。ステンレスタンクに入れ自然発酵。3000Lの古樽で10ヶ月、2000Lのステンレスタンク で5ヶ月熟成。自然MLF。無清澄/無濾過。瓶詰め前に少量の亜硫酸10ppmを添加。Total SO2: 検出値以下。ABV: 12,5%。飲み頃: 今から2030年。

<ストーリー(ショート):Edited by essentia>
「みずみずしいハーブのような香味と緊張感あるストラクチャー、どこか瞑想に誘うような深い余韻。神々しい液体」
オーストリア最南端のワイン産地ズュート・シュタイヤーマルクで、ソーヴィニヨン・ブランとシャルドネを主体に白ワインに特化するヴェルリッチ当主のエヴァルト・チェッペ。そのワインには、みずみずしいハーブのような香味と緊張感あるストラクチャー、どこか瞑想に誘うような深い余韻があります。
17世紀に開かれたヴェルリッチ農園を、父から受け継いだのは2004年。標高320〜500メートルの斜面の中腹にある17haのビオトープのなかに、7.6haの畑があります。地中海からの風が、近くのドラウ川の反射で温められて吹き込むため、近隣よりも早くぶどうが熟し、病害もつきにくいそう。
エヴァルトにとって、ぶどうを育てる事は、人生の一部。徐葉、摘房、土起こしといった畑への干渉はほとんどせず、「植物、動物、昆虫と同じ自然の一部として、畑の仕事に関わる」のが信条。看板ワインの「Ex Vero」は、「真実で偽りがない」を意味するラテン語で、彼の哲学を表しています。
ヴェルリッチのワインを特徴づけるのが、シュタイヤーマルク特有の海洋性堆積土壌のオーポク。石灰岩、泥岩、粘土、シルトなどが押し固められた岩で、ぶどうに力強さと繊細さ、鉱物的なニュアンス、エキゾチックな風味をもたらします。畑の地勢によりオーポクの含有率が異なり、それを活かしながら、単一品種、ブレンド、ゲミュタサッツ(フィールドブレンド)、そしてオレンジワインと、様々なスタイルに仕上げます。最低22か月と⻑い熟成期間を取ることで、オーストリアの白ワインの造り手には珍しく亜硫酸ほぼ無添加。難しい年にかぎり瓶詰め前に添加するけれど、微量15mg/l以下です。
ふだんのエヴァルトは、常に謙虚で控えめながら、正直に語る言葉の全てが心に残ります。それはまるで、後からジワジワおいしさが効いてくるヴェルリッチのワインそのものです。

<ストーリー(ロング):Edited by essentia>
「真面目で地味で、やさしく滋味深く。湧き出る研ぎ澄まされたエネルギー」

基本情報
当主:ブリギッテ&エヴァルト・チェッペ Brigitte &Ewald Tscheppe
醸造責任者:エヴァルト・チェッペ
総栽培面積:7.68ha(農園総面積:17ha)
土壌:主にオーポク(シュタイヤーマルク特有の海洋性堆積土壌で、石灰岩、泥岩、粘土などが押し固められたもの)
栽培ぶどう品種:ソーヴィニヨン・ブラン50%、モリヨン(シャルドネ)40%、他、ヴェルシュリースリング、ゲミシュタ・サッツ(ソーヴィニヨン・ブラン、モリヨン、ヴェルシュリースリング、ムスカテッラ、トラミナーなどの混植)
畑:標高320−500メートル、斜度25−70度の斜面
樹齢:18−58年
年間総生産量:2万本
収穫時期:9月中旬−10月初旬

「ナチュラルワイン界の“New” Old wine(新たに注目を浴びる伝統産地)」と呼ばれるオーストリアで、ソーヴィニヨン・ブランとシャルドネを中心に白ワインに特化して独自の世界を展開する、南部シュタイヤーマルクのヴェルリッチ当主エヴァルト・チェッペ。
「イージーゴーイングなワインには興味がない」
けれど、
「ヘビーでビッグなワインにも抵抗がある」
とみずから語るように、ヴェルリッチのワインに共通するのは、みずみずしいハーブのような繊細な香味と緊張感のあるストラクチャー、そしてどこか瞑想に誘うような深い余韻。ワインジャーナリストのジェイミー・グッドは、ブログのなかで、「〈ダグノー〉・ミーツ・〈ラヴノー〉」と、仏ロワールとシャブリのふたりの”天才“にたとえています。
ズュート・シュタイヤーマルク(シュタイヤーマルク州南部)DAC(Districtus Austriae Controllatus)は、オーストリア最南端のワイン産地で、そのなかでもエヴァルトが生まれ育ったロイチャッハ村は最も南に位置しています。主都ウィーンからは特急列車と各駅停車を乗り継いで2時間半。いっぽうスロヴェニア第二の都市マリボルまでは、車で約30分。
「母は、普段、スロヴェニア語で話していたよ」
とエヴァルト。
5人兄弟の末子で、長姉は、ヴェルリッチ農園から尾根一つ隔てたところで、夫ゼップ・ムスターと共に、ワールドクラスのワインを造るマリア。兄は、ヴェルリッチの斜面の上部に畑をもち、トンボやトカゲをデザインしたアイコニックなラベルのワインが人気のアンドレアス・チェッペ。3兄弟は、ビオディナミ生産者団体、デメーター・オーストリアのメンバーで、また、フランツ・シュトローマイヤー、ローラント・タウスを加えた5生産者で〈シュメクト・ダス・レーベン(命の味)〉というグループを作り、価値観を共有しています。

■摘芯なし!ぶどうの新梢が風に揺れるユニークな光景
標高320メートルから500メートル、斜面の中腹にあるヴェルリッチは、農園というより17haの広さをもつビオトープです。羊が草を食み、ニワトリが自由に駆けまわり、7.6haの畑は山の木々に守られています。
地中海からスロヴェニアを渡ってきた風が、近くを流れるドラウ川(Drau)の反射で温められ、まるでポケットにおさまるように吹き込むため、近隣よりも温かくぶどうが早く熟すそう。年間降雨量は約1100mmと、ヨーロッパのなかではダントツに多いけれど、この風のおかげで病害もつきにくいのです。
17世紀に開かれた農園でワイン造りを始めたのはお祖父さんで、2代目のお父さんが2004年に他界。それを末子のエヴァルトが受け継いだのは、
「マリアもアンドレアスも、すでに自分たちのワインを造り始めていたから。それぞれ独自のアプローチがあるから一緒に造るのはムリ。でもアンドレアスとは、醸造所を共有しているよ」
マリアの夫、ゼップ・ムスターはまた、ぶどうの育て方を、義父に学んだと折に触れて話しています。
お父さんのアンドレアスは、戦後のある時期、その頃もてはやされていた化学肥料や除草剤を使用したことがありましたが、明らかに地力が弱ったことから自然な栽培に戻したそう。彼が考案した仕立てはユニークで、摘芯をせず、180cmぐらいの高い木の群れの梢が、風に柔らかく揺れている様子は、印象的です。
「フェノール(植物成分)のバランスが整うと、梢は自然に地面に向けて折れ曲がることで葉の生長が止まり実の成熟が始まる。とても理にかなっている方法だ」
古くから、この地方でワインを造る人は、個人名でなく農園の名を屋号にする習慣があり、エヴァルトも
「そのほうが土地や地球とつながっている気がする。前の世代への敬意を表現できる」、これにならっています。

■オーストラリアへの旅で、心がかたまった
エヴァルトのワイン造りに指針を与えたのは、2001年のオーストラリアへの旅でした。地元の醸造学校を卒業したけれど、
「自分は何もわかっていない」と感じていたとき、縁あって訪ねたのは、1980年代にデメーター・オーストラリアを立ち上げた農学者アレックス・ポドリンスキー。
彼から学んだことは、
「ビオディナミの調剤は、様々な形で宇宙の力を借りながら、土壌や植物(ぶどう)に作用し、そのインパルス(感情)を強めたり、弱めたりしながら、ライフフォース(生命力)を最大限に活用する」
無理やり病気を押し込めるのでなく、自然と協調しながら畑の個性を伸ばしていくのです。
「ぶどうと向き合うなかではっきりわかったのは、人間は自然よりもよい仕事はできない。だから自然と一緒に働いて学ばせてもらう。もちろん、天候はさまざまな試練を突きつける。しかし、実はこの逆境こそ、私たちが決断力を養う大事なとき。人間も、木、動物、昆虫と同じように自然の一部として、自分のやるべきことをやっていきたい」
いつしか、エヴァルトにとって、ぶどうを育てワインを造ることは、人生の一部となりました。畑への不必要な干渉は年々減っていき、今では、徐葉、摘房、土起こしは、ほとんどしないそうです。

■畑に植わるぶどうをブレンドして、畑の景色を再現する
エヴァルトが当主となったころ、ニューワールドを席巻したヴァラエタルワインの流行がオーストリアにも押し寄せ、とくにシュタイヤーマルクは、仏ボルドー&ロワール、ニュージーランド南島のマールボロと並ぶソーヴィニヨン・ブランの銘醸地として注目されていました。
「ぶどうには土地のティピシテ(個性)が表れるというが、それよりも栽培や醸造のプロセス、造り手のアプローチで味わいが変わるのではないか」
エヴァルトは時代の潮流に疑問を感じました。表現したいのは、「my piece of land」と彼が呼ぶ祖先から受け継いだ土地。そして辿り着いたのは、土地に植わるぶどうをブレンドして彼らがもといた景色を再現する、オーストリアで“キュヴェ”と呼ばれる「オーケストラがハーモニーを奏でるような」ワインでした。
ズュート・シュタイヤーマルク地方の北東にあるブルゲンラント地方の東端からハンガリーへ続くパンノニア平原は、新生代第三紀鮮新世(500万−258万年前)には、パンノニア海という広い海でしたが、アルプス山脈の造山運動の影響を受けて干上がり陸地になりました。
その時代の海洋性堆積岩が押し固められた心土(subsoil)がズュート・シュタイヤーマルクのワインを特徴づける土壌“オーポク”です。石灰岩、泥岩、粘土、シルトなどが押し固められた岩で、形成された年代や鉱物組成により、色はさまざまですが、ヴェルリッチでは、濃灰色、茶色、青灰色。仏ジュラのマルヌブルーとよく似ています。掘り返し手で握ると、あっけなく簡単に割れるほど、多孔性で水はけがよく、ぶどうの根は深く下に伸びてミネラル分をよく吸収します。
シュタイヤーマルクの観光パンフレットにひんぱんに登場する「オーポク土壌で育ったぶどうは、リッチでクリーミーなテクスチャーがある」との謳い文句には確かに納得ですが、力強さだけでなく、フレッシュな酸味、鉱物的なニュアンス、エキゾチックでスパイシーな香味など多面的な要素を包含した魅力が、オーポクの真のスゴさではないでしょうか。
ヴェルリッチの畑は、おもに斜面の標高により、3つの性質に分かれ、オーポク率が高いほど、ぶどうは繊細で複雑、収量は低くなります。斜度70度にも及ぶ急峻な上部の南向きの区画は、ほぼ純粋なオーポク(わずかな粘土の表土topsoilが覆う)、ぶどうはほとんどがソーヴィニヨン・ブランで、ほんの少しのモリヨン(シュタイヤーマルクでは、シャルドネをこう呼ぶ)が植わっており、トップキュヴェ「EX Vero III」は、ここから生まれます。
いっぽう斜面下部は、オーポクは地下の深いところにあるため、根のまわりは、ほとんどが粘土の肥沃な土壌。ここではモリヨンが大勢を占め、ソーヴィニヨン・ブランはわずか、これが「EX Vero I」の区画です。その中間の「EX Vero II」は、オーポクと粘土のバランスがよく、ソーヴィニヨン・ブラン中心です。
EX Veroは、「真実で偽りなし。真っ当であること」を意味するラテン語で、ヴェルリッチの哲学を表したものです。
ソーヴィニヨン・ブラン、モリヨン、ヴェルシュリースリング、ゲヴェルツトラミネル、ムスカテッラの5つの品種のゲミュタサッツ(フィールドブレンド)の畑は、お父さんのアンドレアスが1960年に植えた最も古い区画で、これらを混醸した
「トライゲネラツィオンヴァイン(独語で3世代のワイン)」は、作柄のよい年だけ造られます(現行の2017の前は2015)。というのも、収量が小樽(225ℓまたは300ℓ)一樽分に満たない場合があるから。
ワイン名は、すばらしい畑を残してくれた祖父と父に対する感謝と、それを受け継ぐエヴァルトの意志がこめられています。

■最低22か月寝かせてリリースされる
セラーのなかでは、
「私はただの管理人。静かに辛抱強く、畑が培ったものをこわさないように心がける」とエヴァルト。
ぶどうのブレンド比率はヴィンテージにより異なりますが、「EX Vero I」は、通常大樽(1200−2400ℓ)で発酵&熟成、「EX Vero II」と「EX Vero III」は大樽で発酵、小樽で熟成させます。
ワインが樽の中で過ごす時間は、最低22か月は必要だそうで、飲み頃と判断した時点でリリースされます。
最もベーシックな「EX Vero I」はモリヨン率が高いため、熟成させると、石をなめるような鉱物的な香味がブルゴーニュのハイクラスのシャルドネに似たニュアンスが。いっぽう「EX Vero III」はソーヴィニヨン・ブランが主体なので、爽やかな酸味と繊細なテクスチャーが、かぎりなくエレガントです。
単一品種のワインを造り始めたのは、10年ほど前のこと。懇意にするレストランからの頼まれたためです。「ソーヴィニヨン・ブラン・オーポク」「モリヨン・オーポク」「ヴェルシュリースリング・オーポク」のぶどうは、「Ex Vero II」と同じぐらいの標高の畑から、なかでもヴェルシュリースリングは、1971年に植えられた古木で、いずれも大樽発酵、熟成です。
2014年には、ソーヴィニヨン・ブランとモリヨンのブレンドのスキンコンタクトのワインを造り始めました。
「私のワインは色が濃いので、よく『スキンコンタクトをしているのか』と聞かれて興味をもったのがきっかけ」
「グリュック(独語で幸せの意味)」は、2週間ぐらいの軽い醸しで、山椒のようなスパイシーな香味が持ち味。
「フロインデ(独語で友達の意味)」は1年じっくり醸したもので、プーアール茶や干し杏などのオリエンタルな香りが印象的です。
「ドグマ(宗教の教義)になっては意味がないので、亜硫酸無添加にそれほどこだわってはいない」
といいつつも、常に15mg/ℓ以下にとどめているのは、オーストリアの白ワインの造り手では非常に珍しい。健康なぶどうと長い熟成期間の賜物です。
普段のエヴァルトは、控えめながら温かい笑顔が印象です。
「ここ数年、ヨーロッパ諸国やアメリカからオファーが絶えないことに、ちょっと驚いている。自分は何も変わってはいないのに」
と謙虚に話してくれました。
本質を求める時代の流れが、彼のワインのスタイルとピッタリと合ったのでしょうか。口数はホントに少ない人ですが、挫折も失敗も含めて、正直に語る言葉の全てが心に残る。それはまるで、後からジワジワおいしさが効いてくるヴェルリッチのワインそのものです。( 文:中濱潤子)
(以上、輸入元情報を基にエッセンティアにて編集。転載の場合は必ず引用元を明記のこと)
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