[造手] Maria & Sepp Muster / マリア&セップ・ムスター
[銘柄] Rosé vom Opok / ロゼ・フォム・オーポク
[国] Austria / オーストリア
[地域] Steiermark / シュタイヤーマルク州, Süd Steiermark / ズュート・シュタイヤーマルク
[品種] ツヴァイゲルト主体, ブラウフレンキッシュ, ブラウアー・ヴィルトバッハー
[タイプ] ロゼ / 辛口 / ミディアムボディ / 酸化防止剤無添加
[容量] 750ml
<銘柄エピソード:Edited by essentia>
植樹されたのは1983年と、温暖化がはじまる以前、この地域で赤ワインが珍しかった頃のこと。近年の温暖化で、赤ワインの質はどこも向上しているが、この地の冷涼さが繊細で複雑な個性に寄与している。果実の完熟が難しかった2014年に実験的に造られてから、毎年醸造されるようになった。
<栽培:Edited by essentia>
位置:標高430−450m、東向き、斜面の下部、土壌:粘土質シルト、植樹:1983年。
<醸造:Edited by essentia>
手作業で収穫、除梗。木樽(容量約225L、約20年間使われた古樽)で醗酵。約10ヵ月後に澱引きし、木樽(容量約225L)で約14ヵ月間熟成。
<ストーリー:Edited by essentia>
ドメーヌ解説
私達マリア・ムスターとセップ・ムスターは、1978年に両親であるルドルフ・ムスターとテレジア・ムスターから10haあまりの葡萄畑を所有する醸造所を継ぎました。醸造所が登場する最も古い記述は1727年まで遡ります。また、1787年に神聖ローマ帝国皇帝ヨーゼフ2世のもとで作成された地図に醸造所の葡萄畑の記述があります。
本人の略歴
ワイン醸造やブドウ栽培についての感覚は、子供の頃両親がブドウ畑で働いている間にブドウ畑で遊んでいる時、自然に身についていきました。これは私の土台となっており、その頃の感覚は最近特に再び蘇ってきます。醸造の理論については、オーストリアのクロスターノイブルクという町にある、ワイン醸造と果物栽培のクロスターノイブルク専門学校に5年間通いました。その他、オーストリア、ヨーロッパ、アメリカ他、世界中のドメーヌを訪問し、研修しました。
哲学
私達はワインの生命感、本物の持つ美しさ、そして個性を大切にしています。それは精神的な面及び、葡萄畑やセラーでの労働の一連のプロセスの結果からくる姿勢です。ワインは生きものであり、常に姿を変えるものです。この生命感をワインに与える為には、一歩引いてワインを見守り、分析値から距離をおいて、ワインの魂に救いの手を差し伸べるようにすることが必要です。ゆっくりと時間をかけて楽しめば、ワインはあなたを内面への旅へといざなうことができます。
私達はワインに空間と時間を与えて、そのワインが内に秘めた個性、つまり産地、土壌、生産年の特徴を表現したいと考えています。ゆっくりと丁寧な醸造により、ワインの長期間楽しめて熟成する能力を損なわないようにしています。この古くからの伝統に忠実なワイン造りを行うには、セラーではワインはなるべく人為を加えず、葡萄畑では注意深い作業を行うことが基本です。その際、私達は土壌、葡萄樹、そしてワインが可能な限り生き生きと、生命力を持つよう心掛けながら作業します。
私達は自然の中で生活し、自然を観察し、毎日そこから学んでいます。エコロジカルで環境持続型農作業は、活力あるものを長期的に生産していくのに役立っています。そうした製品は人間にとって有益であるとともに、次世代の生活基盤を確かにします。その実現のために、私達は葡萄畑では宇宙のリズムを考慮しながらビオディナミ農法を実践しています。2003年にはデメターのメンバーとなっています。
私達はワイン産業が世界的な規模で工業的に標準化されつつある時代に生きており、醸造技術的には欠点のない、毎年同じ味のするワインが大量に生産されています。その一方で、手作りの一つ一つが個性的なワインも造られています。それは魂のこもったワインです。私達は後者のワイン造りを行っています。地球資源に注意深く向き合いながら高品質なものを造ることは、深い喜びと満足をもたらしてくれます。本物のワインだけが、飲み続けたくなる体に良い味わいと官能性を持っていると考えます。
葡萄畑は海抜430−470mに位置し、全て醸造所の周りに広がっています。葡萄畑において最も大切にしていることは、土壌と植物の生命力を保つことです。土壌、植物とそれを取り巻く環境が相互に調和した生態バランスに到達するために、ビオディナミを採用しています。ビオディナミはルドルフ・シュタイナーが提唱した手法で、その中には植物、ミネラル、動物性物質からなる薬草茶やプレパラートを活性化(ディナミジーレン)して散布することも含まれますが、その際特定の天体の位置関係を参照して作業を行っています。肥料、除草剤や合成農薬は一切利用しません。収穫量は自然に従い、個性に満ちて複雑なワインのもととなる、粒の小さな香り高い葡萄の収穫を目指しています。
畑について
栽培方法:ビオディナミ
-その栽培方法の開始時期:1998年
-その栽培方法を適用している畑名:全て
-栽培方法の将来的な展望:土とブドウ樹、ワインが活力を保つ為の手助けができるような栽培を目指している。
認証機関:デメター Demeter
土壌:石灰質を含んだ泥灰岩もしくは泥灰岩から成る粘土質のシルトで、これが固形化したものをこの地方ではオーポク土壌(Opokböden)と呼びます。この土壌からは暖かみがあり、水晶のように澄んだワインが出来ます。
微気候:イルミッツ地方独特の気候(das illyrische Klima)で、大陸性気候の影響は弱く、夏は温かく冬は寒さが穏やかです。特にコアアルプ(訳注:オーストリア南部の山脈)からの冷たい風と夜間の冷え込みにより、この産地独特のワインが生まれます。
自社ブドウ畑面積:10ha
契約ブドウ畑面積:0ha
自社ブドウ畑の数:畑の場所により(畑の下部か、中腹部か、上部かなど)、オーポク Opok、グラーフ Graf、スガミネック Sgaminegg の3つに区分
自社栽培ブドウ品種:
(白品種)ソーヴィニョン、シャルドネ、ヴェルシュリースリング、ゲルバー・ムスカテラー
(赤品種)ブラウフレンキッシュ、ブラウアー・ヴィルトバッハー、ツヴァイゲルト
ブドウ以外の自社農作物:なし
ブドウ畑以外の自社畑総面積:2ha
主な仕立て方法:リヴァース・トレリング・システム Reverse Trelling System(下記参照)
葡萄畑を見渡すと、他の醸造所の葡萄畑とは様子が違うことに気付きます。野放図で原始的に見える仕立て方で、単一架線方式(Eindrahterziehung)あるいは反転仕立て(Umkehrerziehung)と呼ばれています。この葡萄樹本来の姿に近づけることを目指した仕立て方をすることで、葡萄樹は栗の木の杭の高さまで育ちます。その高さまで達すると、約1.8mの高さに渡された一本の針金に枝を這わせます。新梢は針金から垂れ下がります。先達が編み出したこの仕立て方は畑の土壌に最適で、シュタイヤーマルク南部の気候条件にも適合しています。これにより、生理的に完熟した葡萄を収穫することが出来ます。
仕立ての支柱の素材:栗の木
仕立ての添え木の素材:栗の木
堆肥:堆肥や化学肥料は使用していない。ビオディナミ・プレパラートの500−508番を畑に撒いている。
醸造について
酵母のタイプ:野生酵母
圧搾方式:空気圧式プレス
醗酵容器の素材と容量(L):2400、1800、1200、600、300、225Lの木樽
熟成容器の素材:木樽
セラー環境:セラーはブドウ畑に囲まれるように、ドメーヌの中心にあります。セラー全体の75%は地下にあり、25%は北側の地上階にあります。おそらく16世紀に建てられたと思われる古い建物です。80cmの暑さの壁はこの地方で生産された煉瓦と石でできており、天井はアーチ型になっています。
年間生産ボトル本数:約25,000−30,000本
【2020年11月:2017,2018VTを試飲したのちの生産者への質問と回答】
Q. ブレンド比率について。ふくよかな果実味の香りと、美しい酸が両立されていて、それは複数の品種がブレンドされていることによるのか。ブレンド比率は毎年違うのか?
A. ブレンド比率は毎年変わる。それぞれの品種の出来は年によってかなり違う。正確な比率はわからない。自然が与えてくれたものを生かすだけだ。オポークは最初に収穫したブドウを使い、それは樹勢がどちらかといえば強い樹からの収穫だ。2018のだいたいの比率はウェルシュリースリングが60%、ゲルバー・ムスカテラーが20%、ソーヴィニヨン・ブラン10%、モリヨン(シャルドネ)10%くらいだと思う。
Q. 白品種の収穫日、覚えている範囲でだいたいの収穫期間を教えてほしいです。美しい熟した果実味と、青さを感じさせない酸、それなのに、10%というアルコール度数。どうしてこのようなことが可能なのか。
A. 収穫は2018年9月6日から20日にかけて。ゲルバー・ムスカテラーとウェルシュリースリングは、このあたりでは収穫時の糖度が低めになる。成熟は、ビオディナミ農法と栽培手法(一本の針金に這わせた枝から新梢が下方に延びる)が促進している。この方法だとブドウは生理的完熟に早めに到達する。成熟期を人為的に伸ばす栽培技法(たとえば枝の先端を切り落とす)は用いない。私達が目指しているのは、ブドウば自然のサイクルに沿って一年を過ごすことだ。森の木々の葉が色づくころ、ブドウ樹もそうなるのが望ましい。
Q. Opok は混釀なのかブレンドか。
A. ブレンドだ。
Q. 今回の入荷では総亜硫酸値がおしなべて低いが、亜硫酸塩の添加はやめたのか。
A. 基本的には亜硫酸塩は添加しない。添加するのはただ、「もしかすると10mg/Lくらい添加したほうが良いかもしれない」と私の感覚が言うときだけだ。
Q. ウェルシュリースリングは2018は造っていない?
A. 2018と2019はウェルシュリースリングは造らなかった。収穫量が少なすぎたため。2020はまた造れるかもしれない。
(以上、輸入元情報を基にエッセンティアにて編集。転載の場合は必ず引用元を明記のこと)