[造手] L'alezan / ラルザン
[銘柄] Metonymia / メトニミア
[原産国] France / フランス
[地域] Cotes du Rhone / コート・デュ・ローヌ地方, Ardech / アルデッシュ県, エターブル村
[品種] Viognier, Marsanne, Roussanne, Muscat / ヴィオニエ, マルサンヌ, ルーサンヌ, ミュスカ
[タイプ] オレンジ / 辛口 / ミディアムボディ / SO2(酸化防止剤)無添加
[ALC] 11.5%
[容量] 750ml
[生産量] 4,500本
<輸入元コメント>
1週間ほどスキンコンタクトしたオレンジワイン。カリン、ドライアプリコット、オレンジピール、シナモン、海藻など、一口ごとに表情の異なる香味が楽しく、飲み心地は軽やかですっきり。日本の食卓に合いそうです。最後にユーカリやミントのようなハーブのニュアンスがあります。翌日は果実味が深まります。
<畑>
Gard La Tangente, 土壌:Clay-Limestone soil、標高:150m、向き:南東、樹齢:5-9年、密植率:20-40hL/ha、コルドン仕立て
[栽培] 有機栽培(ビオロジック)
<醸造>
8月末に手積みで収穫開始。除梗、6日間醸した後、空気式プレスで搾汁。60%を600Lの木樽(10年使用)で、40%をステンレスタンクで8ヶ月熟成。瓶詰め前に一度ラッキング(滓引き)。4月中旬に瓶詰め。
<ストーリー:サマリー>
2013年設立。2016年が初ヴィンテージ。フランス・コート・デュ・ローヌ地方(アルデッシュ県)で、レミ・ボヌトンと妻のパトリシアが始めた新しいドメーヌ。ラルザンは、仏語で「栗毛」を表す通り、相棒である馬の手(脚?)を借りて、トラクターの入れないような急斜面の区画の畑仕事を全てマニュアルで行っています。SO2を含め、添加物は一切なし。シグネチャーワインである、シラーのペットナット・ ロゼをはじめ、どのキュヴェもバランスのとれた洗練された味わいいで、パリのワインシーンのみならず、海外のハイエンドな店でも注目されています。
彼らのワインを特徴づけるのは、 “トゥルノンの花崗岩Granite de Tournon”と呼ばれる特別なテロワールです。約3億2000年前に起きた中央山塊の造山運動と地殻変動によって生まれた結晶質岩を含む変成岩が風化した土壌で、そこに植わるぶどうは、根が非常に深く地中に伸び、ミネラル分を吸収するといいます。ドメーヌとローヌ川の間に位置する、ドゥー渓谷の北側のエターブル・モラン(394−410m)とエターブル・ラ・フォルシュ(345−365m)のひと続きの畑(合計約1ha)は、全体がトゥルノンの花崗岩土壌で、樹齢75−100年の古木のシラーは彼らの宝ものです。よりローヌ川に近いトゥルノン・シュール・ローヌ村のサン・ジュストにある1haの畑は、標高は175−228mとそれほど高くないものの、急勾配で、トゥルノンの花崗岩と黄土が半々、白ぶどうに向いた土壌で、10%が樹齢28年のマルサンヌ 、60%が5年のマルサンヌ、30%が5年のルーサンヌを栽培しています。 畑のぶどうがすべて成木になるまではと、まずはペットナット・ロゼの「メルシー2016」をリリース。2017年には、志を同じくする仲間のぶどうで造るネゴシアン・ブランド、ラ・タンジェントをスタートさせました。 今回、ドメーヌものとしては、「メルシー2019」に加え、発泡しなかった(!)2018年の「メルシー」をスティルワインに仕上げた「ドゥ・リアン 2018」(いずれもロゼ)。ネゴシアン・ブランドのラ・タンジェントからは、ボジョレのガメイとガール県のサンソーで造るチャーミングな赤ワイン「レスキューズ2018」、そして同じくガール県のヴィオニエ、マルサンヌ、ルーサンヌ、ミュスカを1週間醸した、飲み心地のよいオレンジワイン「メトニミア2018」が登場します。 ラベルのデザインも秀逸です。ドメーヌものは、画家でもあるパトリシアが、いつも援助の手をさしのべて くれる人たちへの感謝をこめて「握手」の絵を。友達のぶどうで造るネゴシアン・シリーズは、友達のアーティストに依頼した様々な作品をフィーチャーし、アートシリーズを展開しています。
<ストーリー:フルバージョン>
初ヴィンテージは 2016年と新しい造り手ながら、パリのワインシーンだけでなく、グルメ界のアカデミー賞と呼ばれる“世界ベストレストラン”の常連シェフ、ガガン・アナンド氏の新店(タイ・バンコク)などのハイエンドな店にもオンリストされるラルザン。
レミ・ボヌトンと妻のパトリシアが、フランス南部コー ト・デュ・ローヌ地方で営む小さなドメーヌです。力強い品種の代表であるシラーを、限りなくデリケートかつ旨味たっぶりに仕上げたロゼ・ペティヤンや、バランスのよさとクリアな飲み心地が印象的なオレンジワインなど、洗練されたテイストが、注目されています。
ドメーヌ名のラルザンは、仏語で「栗毛」の意味。畑仕事の相棒であり、家族同然である、栗毛色の馬に敬意を表して名付けられました。
■馬と一緒に、子供の頃から憧れていた、ぶどう作りをスタート。
フランス第二の都市、リヨンから車で約1時間南に下ったタン・レルミタージュ(Tain-l'Hermitage)。コー ト・デュ・ローヌ地方のワイン生産・流通の中心地が、レミの故郷です。小さい頃から自然が好だった彼は、ワイン造りに憧れていましたが、お父さんは、ワイン造りとは無縁の大学教授。 「コート・デュ・ローヌ地方の中でも、僕らの住む北部(セプタントリオナル)は、コート・ロティから サン・ペレまで、きら星のようなクリュが続く。ぶどう畑の値段も破格なことから、「ワイン生産者の家系に生まれなければ、畑をもつのはムリ」と言い聞かされて、ラグビーやボート競技の選手として20代を過ごしたよ」
一方、パトリシアはロワール出身。スペインにルーツをもつ彼女 は、7年間スペインでマーケティングの仕事をして帰国。「ワインの宣伝を多く手がけていたし、試飲会にもよく行ったけど、まさか自分がワインを造るようになるとは思わなかった」
2010年頃から、レミは夏のアルバイトとして、近くの<アラタシュ>や<ゴノン>などのワイナリーで働き始め、それまで封印してい た、自分の畑でワインを造る夢が盛り上がります。そこで、思いついたのが、馬と一緒に畑の耕作を請け負うという仕事。機械の入れない急峻な畑ではとくに重宝がられ、「仕事を通して土壌の働きが理解できたし、生産者の交友関係も広がった」
やがてパトリシアと知り合い、二人は様々なワインを試飲する中で、ナチュラルワインの世界に惹かれていきました。「例えば、エルヴェ・ラヴェラのワインは誠実、ジャン・ピエール・ロピノのワインはクレージー!ワインは人柄を表す。飲む人に「ワオ!』と思ってもらえるようなマジカルなワインを造りたいと思うようになった」
■思いがけず、樹齢100年のぶどうが植わる畑に出会う。
2013年、幸運にもタン・レルミタージュ村とトゥルノン・シュール・ローヌ村に、合計2haほどの土地を借りるチャンスが訪れました。 畑の格付けに拘るのをやめて、とにかく面白いテロワールを探し始めると、後継者が居ない為に40年もの間、休耕地だった土地が見つかったのです。なんと樹齢100年のシラーが植わっていました。 2018年には、小さな醸造所を兼ねた家を建て、前庭にぶどうを植えました。
アルデッシュは、ボジョレやロワールと並び、ナチュラルワインの生産者が多く集まる地域です。北部には、エルヴェ・スオー、ドメーヌ・レ・ミケット、ダニエル・サージュ。南部には、ル・マゼル、ジル・アゾーニ、ジェローム・ジュレ、 ドュー・テールなどなど蒼々たるメンバーが。
歴史の記録に最初に登場するのは、紀元前後のこと、ローマ帝国の属領ナルボンヌ地方のぶどう栽培の北限がコート・ロティでした。ローマ帝国初期の博物学者、 大プリニウスは、代表作「博物誌」の中で、南部の村、アルバ・ラ・ロメーヌ を、“谷のワイン”の産地として紹介しています。19世紀のフィロキセラにより大打撃を受けワイン産業は低迷しますが、1970年代になって、ブルゴーニュのルイ・ラトゥールが、アルバ・ラ・ロメーヌにワイナリーを興したこと、共同組合ができたことなどで少しずつ商
業的なワイン造りに光が見えてきました。
ナチュラルワインの小さな波が起こったのは、1985年のことでした。南アルデッシュには、培養酵母などの添加物に頼らないワイン造りを科学的に研究し、生産者たちを啓蒙した微生物学者ジュール・ショヴェ (1989年没)のメソッドを引き継いだ生産者ジャック・ネオポールが住んでいました。彼に教えを請うために、マルセル・ラピエール、ジャン・フォワヤール、ギイ・ブルトン、ジャン・ポール・テヴネのボジョレの“ギャング・オブ・フォー”の面々が通ってくるようになったのです。ジャックもまた、しばしばボジョレに指導に行くようになりましたが、車の運転をしなかったため、当時、カーヴ・コーポラティヴという共同組合の副組合長を務めていたル・マゼルのジェラール・ウストリックが、運転をかってでました。ボジョレの生産者たちの仕事を近くで見る内に、彼のワインもどんどんナチュラルに。ついに1997年、慣行農法を推進する共同組合を辞め、その手法をアンドレ・カレク、シルヴァン・ポックらに伝え、このエリアでナチュラルワインを造る人が増えていったそうです。
■ラルザンのワインを特徴づけるトゥルノンの花崗岩
「私たちの畑を特徴づけるのは、“トゥルノンの花崗岩 Granite de Tournon”と呼ばれる特別な岩」とパトリシアは話します。
西を中央山塊、東をアルプス山脈に挟まれた、切り立った急斜面に、葡萄畑がへばりつくように連なる、 このエリア特有のもので、約3億2000年前に起きた中央山塊の造山運動と地殻変動によって生まれた結晶質岩を含む変成岩が風化した土壌で、そこに植わるぶどうは、根が非常に深く地中に伸び、ミネラル分を吸収するといいます。
借りている畑のひとつは、エターブル村のドュー渓谷の北側にあります。畑からはアルプス山脈の絶景が見えます。エターブル・モランとエターブル・ラ・フォルシュは、1haほどのひとつながりの斜面ですが、標高、樹齢、品種構成の違いから、別々の畑として醸造しています。ラ・フォルシュは標高345‐365m、その上にあるモランは、394‐410m。全体がトゥルノンの花崗岩土壌で、ラ・ フォルシュの方がやや温かい。モランには、75‐100年の古木のシラーが植わっています。一方ラ・フォルシュは、3/4ほどの区画に若いシラーが、残りの1/4は樹齢40年のぶどうの混植(ほとんどシラー)です。南に向いており、日中は太陽燦々、夜にはドュー川 から吹く風で気温が下がり、糖度と酸度のバランスの良いぶどうが育ちます。
一方、ローヌ川に隣接したトゥルノン・シュール・ローヌ村のサン・ジュストにある 1haの畑は、標高は175‐228mとそれほど高くないものの、急勾配で、トゥルノンの花崗岩と黄土が半々、白ぶどうに向いた土壌で、10%が樹齢28年のマルサンヌ、60%が5年のマルサンヌ、30%が5年のルーサンヌです。
有機栽培を始めたのは、レミとパトリシアですが、これまで一度も合成化学肥料や除草剤を使ったことのない健康な畑です。
家の前庭の0.8haのグラン・シェールの畑は石灰岩土壌で、2018年−2020年にかけて、アルバリーニョ、サヴァニャン、ピノ・ノワールを植えました。 「ぶどうの仕立ては、ゴブレ(株)、ペルゴラ(棚)といろいろ試し、剪定も常に見直してはより良い方法を探っている。仲間の生産者ともよく話し、状況にあわせて何でも取り入れるようにしている。とにかくここ数年、気候の変 動が激しすぎて、固定観念に囚われてやっていけない」とのこと。南アルデッシュに比べて雨が多いのが特徴です。
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