[造手] Champagne Marguet / シャンパーニュ・マルゲ
[銘柄] Brut Nature Yuman Premier Cru / ブリュット・ナチュール・ユマン・プルミエ・クリュ
[国] France / フランス
[地域] Champagne / シャンパーニュ地方, Montagne de Reims / モンターニュ・ド・ランス
[品種] Chardonnay / シャルドネ
[タイプ] 発泡 / 白 / 辛口 / ミディアムボディ
[容量] 750ml
<銘柄エピソード:Edited by essentia>
複数のプルミエ・クリュからのブレンドのブラン・ド・ブランで、シャーマンとは弟分のような、メゾンの入り口となるシャンパーニュ。2015VTが初ヴィンテッジで、ステンレスタンクでの醸造が大部分。ブノワによれば、ステンレスタンク醸造のものは、総じて、ガス圧が同じでも、味わいとして泡の印象が弱くなるそうだが、確かにその傾向にあるようだ。
<栽培:Edited by essentia>
位置:標高150m、土壌:粘土石灰質。
<醸造:Edited by essentia>
ステンレスタンクと樽で発酵、ステンレスタンクと樽で9ヶ月間熟成、ティラージュ−デゴルジュマンの期間は通常2年間。
<ストーリー:Edited by essentia>
【ドメーヌ解説】
1870年に創立し、1905年からビン詰めを始めました。現オーナーであり、栽培と醸造のマネージャーのブノワ・マルゲは、5代目にあたります。現在Marguet-Bonnerave(マルゲ=ボンヌラーヴ)一家は、5つのグランクリュ村(アンボネ、ブジィ、アイ、シュイィ、ヴェルズネイ)と、セカンドクリュ(エペルネ)に畑を保有しています。しかし優れた畑を所有しているだけでは優れたシャンパーニュができるわけではなく、現実はより複雑です。優れたワインを造ることは、毎日が挑戦です。すなわち、勤勉に働き、ブドウ畑を観察し、自分のワインと密接に関わり、最良の決断をしようとすることです。定時にだけ働くという時間仕事とはまったく違います。多いなる情熱と広い心持ち、そして献身の結果、大きな喜びと満足感が得られるのです。
ナポレオン時代から別格と評価されたアンボネの区画「ラ・グランド・リュエル」などの他、5つのグランクリュの村に畑を所有し、長年クリュグにもブドウを販売していた。5代目の当主ブノワ・マルゲは、2009年からビオディナミを、2010年から馬による耕作を開始。エルヴェ・ジェスタンのサポートと共同作業から大いに学び、サピエンスはその成果である。土壌学者クロード・ブルギニヨンの助言も仰ぐが、「自らの畑の観察と、畑および自然との対話から導かれる自分の直感を最優先する」。ゆえに、時にはブルギニヨンの助言には従わず、素晴らしい成果を残すのは、自然人の感受性と独自の見識をもとに下す大胆な決断のたまもの。(実際、ブノワは「幼少時はよく家族の畑や森で、石や木の声が聞こえ、その感受性は今もそう変わらない」と語る)。全てのキュヴェでドザージュ・ゼロ。亜硫酸添加量も裏ラベルに明記し、無添加−40mg/lにとどめる。トップキュヴェの一つ「サピエンス」と、最近導入した一連の各クリュ別シャンパーニュの評価も、世界中で急速に高まっている。
ブノワ・マルゲの飽くなき挑戦
マルゲ(ペーレ・エ・フィス)については、樽試飲を通じて醸造家ブノワ・マルゲの確実な歩みを理解し、将来性を確信していました。が、訪問して最初の数年間は、まだ革新の成果が商品としてのワインに現れ出ていなかったので、良心的な価格ながら扱いを見送ってきました。思えば、生産者とインポーターの双方にとって、耐えなければならない苦しい時期でした。そして、本格的な変身の先駆けとなるシャンパーニュ・ロゼがリリースされたのをきっかけとして、本年ようやく胸を張ってご紹介できることになりました。
といっても、現在セラーで静かに眠っている2008,2009,2010のリリースの時を、今かと待ち構えるわくわくとした気持ちを抑えることができません。100%有機栽培に転換した、2010年ベースのキュヴェがリリースされるのはまだ4年先です。また数年後には、ビオディナミ農法のブドウを用い、可能な限り自然な醸造方法に挑む造りから生まれる、比類のないグラン・クリュ・シャンパーニュがリリースされる段取りなのです。ともかく、いよいよ2012年に純粋かつ偉大な味わいのグランクリュ・シャンパーニュがお目見えしますので、どうぞお楽しみに。今回のリリースは、《驚くべき予告編》第一弾といっていいでしょう。
さて、ブノワ・マルゲの新時代を語るにはやはり、シャンパーニュで活躍する今や伝説的なエノローグとなりつつある、エルヴェ・ジェスタン(後掲の合田エッセイ「エルヴェ・ジュスタンから学ぶ」をご参照ください)のことから説明しなくてはなりません。ブノワ・マルゲは有機栽培に興味をもち、2004年にデュヴァル・ルロワ社でシェフ・ド・カーヴ(醸造長)を務めていたエルヴェ・ジェスタンを訪ねました。以来、栽培・醸造の両面でエルヴェに導かれながら、新たな道に開眼し、2006年から本格的に二人の共同作業が始まりました。
5つのグランクリュ村(アンボネ、ブジィ、マイィ、シルリィ、ヴェルズネイ)を含む13.6haの畑をもつ、歴史あるドメーヌの5代目であるブノワにとって、有機栽培に転換することは大変な困難を伴いました。古いネゴシアンを経営する夫人の両親の猛反対と、マルゲ家内や親戚の反対という挟み撃ちは、グラン・クリュに広い畑を持つ古い家柄にありがちな困難なのですが、ことは夫人との離婚にまで発展しました。にもかかわらずブノワは、あえて、売り易いが個性や品格に欠ける凡庸なシャンパーニュ作りを脱し、同志エルヴェ・ジュスタンとともに、新たな可能性に向かって強く前進し始めたのです。
エルヴェ・ジェスタンから学ぶ
(『ラシーヌ便り』no.512009年12月合田泰子・記)
ところで、エルヴェ・ジェスタンの名をご存じでしょうか。『ワイナート』2009年1月号/「シャンパーニュの未来図」に、編集主幹の田中克幸さんによって詳しく紹介された、シャンパーニュで活躍する栽培・醸造のエノローグです。この春、エペルネのサロンでお目にかかり、見るからに優しく静かな人柄の奥に潜む、鋭いまなざしに惹かれました。多忙を極めるエルヴェとは、このたびエペルネのレストランで食事をしながら話をすることができました。実際に会うと、経験に裏打ちされ、アイデアにあふれ、深い洞察力のある彼から言葉は途切れることなく、談笑のうちに4時間余りの夕べは、またたく間に過ぎてしまいました。この夜は、彼が長年シェフ・ド・カーヴを務めていたデュヴァル・ルロワの「トレパイユ1998」が幸いオンリストされていたので、ともに味わうことができました。じつはこのシャンパーニュ、ダヴィッド・レクラパールから買い求めたビオディナミによるブドウから、エルヴェが実験的に造ったものです。
私はル・テロワールを営んでいたころ、ダヴィッドのシャンパーニュをその第一作から紹介していたので、さまざまな視点からトレパイユ1998を興味深く楽しむことができました。
エルヴェその人については、『ワイナート』の特集記事から、なにか神秘主義な思考の強い、ある種マジシャンのような人物だと、想像していました。が、現実の彼は、深く考えて大胆な仮説をつくり、実験によって検証しながら独創的なアイデアの実現にひたむきな努力をする人でした。「ドン・ペリニョンの亡くなった9月14日が私の誕生日で、不思議な縁を感じます」と、笑いながら話すエルヴェ。大地の精を結実するブドウをワインに育てる過程は、自然とのメッセージ交換でもあると考える彼は、目に見えない影響力を及ぼす宇宙と世界のパワーを生かしたシャンパーニュ造りを実践しています。ワインがおのずと美しく育つために、醸造過程でさまざまな阻害要因をとり除く工夫を施すエルヴェの方法は、かつてドン・ペリニョンが鋭い感覚と洞察力でシャンパーニュを仕上げていった史実と重なりあいます。
「世界には、フランスよりブドウ栽培に適した気候に恵まれたところがいくつもある。とすれば、シャンパーニュの生き残る道は、最上のクオリティを造りだす以外にない。なのに、メゾンはラベルやパッケージにばかりお金をかける。実際シャンパーニュは、生産工程そのものに大変コストがかかることを、もっと市場が理解してほしい。‘‘コストにふさわしいビンの中身‘‘を作らなければいけない。そのために、私の魂がここにあるシャンパーニュの地で、勇気ある造り手たちと情熱を共有しながら、仕事をしたいと思っているのです」
と、エルヴェ。
だからこそ、単なるお金儲けのためにコンサルティングを引き受けることはなく、意欲的な造り手との共感に支えられながら、いよいよ大胆なプロジェクトを構想して進めていくのです。その彼が、地質分析の第一人者で、これまた独創的なクロード・ブルギニョンに敬意を払うのは、あまりにも当然のことです。
いまや国際的にワイン造りを指導し、提言を続けるエルヴェの生き方に、大げさにいえば、シャンパーニュだけでなく、ワインの未来が大きくかかっている、と実感しました。
エルヴェとの情熱的な会話をつうじて、そのような予感と未来への確信を、私はひしと感じとることができたのです。このようにエルヴェと話し合うなかで私の心の中に生まれた、感情の共有と生き方への共感をかみしめることから、今回の旅を始めることができるのは、なんという幸せでしょうか。ラシーヌもまた、エルヴェに学びながら、皆さまと共に少しずつ前進を重ねていきたいと願っています。
(以上、輸入元情報を基にエッセンティアにて編集。転載の場合は必ず引用元を明記のこと)