[造手] Margherita Otrto / マルゲリータ・オット
[銘柄] Barolo / バローロ
[国] Italy / イタリア
[地域] Piemonte / ピエモンテ州
[品種] Nebbiolo / ネッビオーロ
[タイプ] 赤 / 辛口 / ミディアムボディ−フルボディ
[容量] 750ml
<栽培:Edited by essentia>
セッラルンガ(ヴィーニャ・リオンダMGAに隣接する、彼が”ソット・リオンダ”と呼ぶ区画)、モンフォルテ(ジネストラ地区)、ヴィニャーネMGA(バローロ村)、コステ・ディ・ローズMGA(バローロ村)に畑を所有。4-5年ごとに堆肥化した牛糞を冬の終わりから春の初めにかけて肥料として使用し、1本のブドウ樹には6-9房のブドウを厳選して残す。銅と硫黄はごく少量のみ使用し、植物と果実を適切に保護している。また、コンポスト化された海藻肥料を年に2-3回葉面に少量散布し、植生の健康と病気への抵抗力を高めている。
<醸造:Edited by essentia>
発酵は通常10-14日間、自然酵母にて、温度管理を行わない40-60hLのコンクリートタンクを使用。活発な発酵期には1日2回ポンプオーバーを行い、一次発酵が完了すると、ワインは果皮とともに長期間マセレーションを行う。その後、伝統的な”カペッロ・ソンメルソ”方式を用いて、浮遊する果皮をワインに沈める。この工程によりワインにさらなるストラクチャー、色、香りの複雑さが加わる。発酵終了後もさらに20-25日間のマセラシオンを続け、合計35-45日間のマセラシオン期間。マセラシオン終了後は、コンクリートタンクまたはステンレスタンクへ。プレスワインも100%使用され、すぐにフリーランジュースに加えられる。6-8日間の沈殿後、粗い澱から清澄され、通常この最初のラッキング後にマロラクティック発酵が始まる。ヴィンテージによっては10-20日間かかり、マロラクティック発酵が終わると、ワインは約1週間後に木製のボッティ(大樽)に移される。熟成期間中、ワインは年に1回、あるいはそれ以下の頻度で滓引きされることが多い。32-34ヶ月間の熟成を経た後、瓶詰めの準備の為に大きなステンレスタンクに移す。ボトルの一貫性を確保する為に一日でヴィンテージ全体を瓶詰め。無清澄、無濾過。
<ストーリー:Edited by essentia>
【偉大な生産者の右腕として 】
マルゲリータ・オットを造るのはアメリカ出身のアラン・マンリー。イタリアワインラヴァーの方は、彼のワインを飲めば、彼が誰とともに働いていたのかがすぐに頭に浮かぶかもしれない。ルチアーノ・サンドローネ、
エリオ・アルターレ、
カヴァロット、
マルコ・マレンゴ。様々な偉大な生産者の下で働いたが、彼のスタイルに最も影響を与えたのは彼が10年働いた
バルトロ・マスカレッロのマリア・テレーザ。最も偉大な伝統派バローロのひとつとして知られる
カンティーナ・バルトロ・マスカレッロ。現当主マリア・テレーザの右腕として2011年から10年間、ブドウ栽培とワイン醸造を行っていた。
【“クリュ”を造らない伝統的なバローロ 】
バルトロ・マスカレッロのスタイルと言えば、全てのクリュを混醸する”アッセンブラッジョ (assemblaggio)”、そして長期マセラシオンと伝統的な大樽による熟成。様々なワイン生産者のもとで学んだアラン。「多くの偉大なバローロ生産者の下で働かせてもらった。みんな個性があって素晴らしいワインを造っているけど、僕はバルトロ・マスカレッロのスタイルが好きだし、それこそが伝統的なバローロだと思うんだ。」マリア・テレーザの右腕として働くかたわら、アランは2012年、0.1 haの畑を手に入れたことで自らのワイン造りをスタートする。2015年に正式にカンティーナを設立し、現在はモンフォルテ・ダルバ、セッラルンガ・ダルバ、バローロ村に4つの畑、計3.2 haを所有している。収穫後、全ての畑のブドウを合わせて醸造を行う。「今はバローロもクリュの概念が確立して、多くの生産者がクリュに注目したワイン造りを行っている。それでも僕にとってはアッセンブラッジョが伝統的なバローロだと思うから、どんなに優れたブドウでも”クリュ・バローロ”は造らないんだ。」現在、アッセンブラッジョワインのみを造っているのはバローロで2生産者のみだという。
【徹底的なこだわり、畑からボトリングまで 】
スタイルが似ているとはいえもちろんバルトロ・マスカレッロのワインとは異なる。それはスイス人の両親を持ちアメリカ生まれという彼のバックグラウンドだけでなく、彼自身の優しくも真面目な性格によるものだろう。おおらかでふくよかさを感じさせるバルトロ・マスカレッロに対し、アランのワインはより緻密で細部まで徹底されたこだわりを感じる。土壌との向き合い方、ブドウ樹の剪定・管理、収穫からボトリングまで、どれほど細かいのか枚挙にいとまがないが、興味のある方は彼のホームページを覗いてみて頂きたい。その情報量にきっと圧倒されるだろう。
「現在、バローロおいて最大のリスクは温暖化によるブドウの過熟。個人的にアルコール度数が上がりすぎることよりも、ブドウの糖度の成長速度に種やタンニンの成熟が伴わないことによるアンバランスさを一番懸念している。」
そう語るアランは基本的にグリーンハーベストをせず、ブドウの蔓もカットせずに巻き付ける”アル・カプレ”という手法を取っている。ブドウを西日や雹から守りながら、種やタンニンの十分な成熟を待てるという。また、樽選びも徹底的にこだわり、彼のバローロにとって理想的としてミッテルベルガー社の大樽を使用している。また、ボトリングでも最初と最後で差が出ないように一日で全てのボトリングを行う。
【バローロへの情熱が紡ぐ緻密で洗練された伝統的スタイル】
友人とのワイン会で1杯のワインがブラインドで提供された。そのスタイルから、ある伝統的なバローロの生産者の名前が頭に浮かんだ。友人がにやにやしながらボトルの包みを外すと、そこには見たことのない”M8”と書かれたシンプルでありながら高級感のあるラベルが現れ、頭が混乱した。「このワインを飲んでバルトロ・マスカレッロを思い浮かべたのは理解できるよ。なぜなら、このM8のワインを造ったのは、10年間マリア・テレーザの右腕としてワインを造っていた人物だからね」その説明を聞いて納得した。このワインは、新しい生産者のものでありながら、風格と威厳に溢れていた。どんな人物がこのワインを作っているのか気になり、翌日すぐにメールを書いた。
2023年の11月、ピエモンテを訪れた際にマルゲリータ・オットを訪問することができた。しかし、そこで聞かされたのは「申し訳ないが、現時点ですべてのワインが売り切れており日本に出せるものはないんだ。それに、日本からは多くのインポーターが問い合わせをしてくれているんだ」という回答だった。事業を始めたばかりの私にとって当然の結果だったが、それでもこの感動的なワインを日本に持ち帰りたくなり、一本を手に入れた。会社のメンバーに飲んでもらうと、皆が一致してそのワインに感動した。「いつか日本のインポーターとして、こんなワインを取り扱えるように自分たちの仕事を頑張ろう」と話し合った日から8ヶ月後、アランから突然メールが届いた。「もしまだ興味があれば、日本に分けられる在庫が少しあるんだ」その瞬間、迷うことなく返信をしていた。
マルゲリータ・オットは、アメリカ出身のアラン・マンリーによって2015年に正式に設立された。アランはワイン愛好家の家庭に育ち、「父も祖父もワインコレクターで、祖父はブルゴーニュ、父はボルドーやカリフォルニアのワインを好んでいた。両親はほぼ毎晩、夕食と共にワインを開けており、それが私にとっては普通の光景だった」と語る。彼は4歳の頃から、父のグラスから少しずつワインを味わい始めた。そして大学卒業後、自らワインを購入するようになり、1980年代後半にはバローロへの情熱が始まった。「最初のバローロが私の小さなセラーに入った時から、ワインに対する生涯の魅了が始まった」と彼は振り返る。
イタリアに移住する前、アランは15年以上ワイン業界に携わっていた。1997年、コロラドスプリングスで”Primitivo”というワインバー兼レストランを立ち上げた。この店は6年間続き、45種類のグラスワインと2,200本のワインリストを誇る有名なレストランとなった。また、2003年には”VintageSpec”を設立し、個人コレクター向けにプライベートセラーの設計や管理を手掛ける事業を展開。2003年から2008年の間にすべての事業を売却したが、一部のコレクター向けには引き続きコンサルティングサービスを提供していた。
1995年に初めてバローロを訪れたアランは、その地域に心を奪われた。それ以降、彼は毎年バローロを訪れ(レストランの開店で忙かった1997年を除く)、テロワールやワイン造りの深い知識を得ていった。様々な要素が、このワインをこれほど魅力的なものにしている。それを知るにつれ、さらに抜け出せない沼へとはまっていく。その好奇心を満たすため、アランは2008年から毎年、様々なワイン生産者の下で収穫期を過ごすこととなる。毎年秋には6-12週間バローロに滞在し、最初の師匠であるルチアーノ・サンドローネのもとでワイン造りを学ぶ。その後もエリオ・アルターレ、カンティーナ・マスカレッロ、アルフィオとジュゼッペ・カヴァロット、マルコ・マレンゴのセラーで経験を積む。
2011年、アランはイタリアへの移住を決意。その地として選んだのは当然バローロであった。そのタイミングで彼に仕事をオファーしたのが、彼のスタイルに最も大きな影響を与えることになる、バルトロ・マスカレッロのマリア・テレーザだった。アランはその後、2021年まで彼女の右腕として、世界で最も称賛されるバローロの一つで10年間働くことになる。バルトロ・マスカレッロで働く一方で、自身のワイナリーを造る夢を実現するため、機会があれば畑やセラーを借りたり購入したりしていった。
2012年にはカスティリオーネ・ファッレットのペルナンノMGAにある約0.1haの古いネッビオーロのブドウ畑を借り、そこで畑作業を開始。2012年から2014年のヴィンテージでは、毎年1樽(500 L)のワインを造った(イタリアでは年間1,000 Lまでは個人消費のためのワイン造りが許可されている)。これらのワイン造りはモンフォルテのメイン広場にある小さな借家の下にある馬小屋を改装したスペースで行い、ワインはその非常に湿った古い地下室で樽熟成された。
「これらのヴィンテージを通じて、私は様々な生産者の下で長年学んできた栽培、処理、剪定、収穫、作業の整理、醸造、圧搾、熟成、ラック作業といったすべての技術を、実践的かつ職人的なレベルで適用する方法を学んだ。トラクターもポンプも電動の除梗機も持っていなかったので、すべて手作業で行ったんだ。背中に担いだ噴霧器でスプレーを行い、除梗は古代の設計で、効果に疑問のある手動式の機械を使って行った。ポンプオーバー・・・バケツで行ったよ。」
このようにして造られたワインは、法的には“バローロ”を名乗ることはできなかったが、DOCGの規則とプロトコルに従って造られたものであり、名前以外は“バローロ”そのものと言えるものだった。2014年の収穫を終えた時、アランはさらに畑を拡大するチャンスを得て、畑は0.3 haに拡大。翌年“アジエンダ・アグリコーラ”として正式にワイナリーを設立した。最初の2つのヴィンテージはバルトロ・マスカレッロのワイナリーで発酵させ、タンクや樽のスペースを借りていたが、2017年からは自宅の地下に新たに改装したセラーでワイン製造を行っている。
現在、彼はセッラルンガ(ヴィーニャ・リオンダMGAに隣接する、彼が”ソット・リオンダ”と呼ぶ区画)、モンフォルテ(ジネストラ地区)、ヴィニャーネMGA(バローロ村)、コステ・ディ・ローズMGA(バローロ村)に畑を所有し、ブドウ栽培は伝統的かつ従来の方法に基づいて行っている。剪定にはグイヨ方式を採用し、果実をつける枝は畑の場所に応じて8-11芽で剪定している。すべての畑では、剪定、枝の固定、トリミング、スカッキアトゥーラ(芽かき)、間引き、枝の配置、棚仕立ての掃除、アーチ状の枝を編む”Ar Caplé”、そして収穫まで、すべて手作業で行っている。4-5年ごとに堆肥化した牛糞を冬の終わりから春の初めにかけて肥料として使用し、1本のブドウ樹には6-9房のブドウを厳選して残す。Ar Caplé”方式では、長く伸びた枝を編み込み、果実を日焼けから守るための日陰を作り、さらに雹からも保護する。
「糖分の成熟がタンニンの成熟を先行しないように、ヴェレゾン期前のグリーンハーベストによる摘み取りはほとんど行わない」
とアランは説明する。収量は41-47 hL/haであり、標高が高いモンフォルテの畑ではやや少なくなる。
「銅と硫黄はごく少量のみ使用し、植物と果実を適切に保護している。また、コンポスト化された海藻肥料を年に2-3回葉面に少量散布し、植生の健康と病気への抵抗力を高めている。この繊細な葉面散布は、果実の負荷を増やさず、植物が健全な成長を維持するために必要な栄養を提供してくれる」
と彼は語る。
アランのワイン造りを特徴づけるのは、アッセンブラッジョ (assemblaggio) である。「“ブレンド”と“アッセンブラッジョ”は似ているようで異なる。ブレンドは、各区画で発酵を行い、最終的に混ぜ合わせること。一方、アッセンブラッジョは最初から全てを混ぜて発酵させることだ。僕にとって、アッセンブラッジョこそがバローロの伝統的な製法だと思っている。もちろん、ヴィンテージによってはこの方法ができないこともあるけれど、このスタイルをできる限り続けていきたい」とアランは語る。彼によると、現在アッセンブラッジョのバローロを造っている生産者は、わずか2ワイナリーしかいないという。もう一つは言わずもがな。
アルコール発酵には温度管理を行わない40-60hLのコンクリートタンクを使用し、発酵は通常10-14日間、自然酵母によって行われる。活発な発酵期には1日2回ポンプオーバーを行い、一次発酵が完了すると、ワインは果皮とともに長期間マセレーションを行う。その後、伝統的な”カペッロ・ソンメルソ”方式を用いて、浮遊する果皮をワインに沈める。この工程により、ワインにさらなるストラクチャー、色、香りの複雑さが加わる。発酵終了後もさらに20-25日間のマセラシオンを続け、合計35-45日間のマセラシオン期間となる。「ただし、ヴィンテージごとに異なり、果皮の品質や特性によって最終的なマセラシオン期間は変わる。これはワインの状態に合わせて決めることで、私が一方的に決めるものではない」とアランは言う。
マセラシオンが終了すると、ワインは果皮から分離され、コンクリートタンクまたはステンレスタンクに移される。プレスワインも100%使用され、すぐにフリーランジュースに加えられる。6-8日間の沈殿後、粗い澱から清澄され、通常この最初のラッキング後にマロラクティック発酵が始まる。ヴィンテージによっては10-20日間かかり、マロラクティック発酵が終わると、ワインは約1週間後に木製のボッティ(大樽)に移される。
マルゲリータ・オットでは、熟成に大きなオーク樽を使用している。カンティーナには10、25、35、50 hLのボッティがあり、すべてイタリア・ボルツァーノのミッテルベルガー社製の樽だ。木材はフランスのアルザス産オークを使用し、ニュートラルな風味を保つように選定されている。ミッテルベルガーは家族経営で生産量が少なく高価であるため、多くのワイン生産者にとって憧れで、長いウェイティングリストがあるという。「ドイツ人よりもドイツ語へのプライドを持っている」と言われるボルツァーノ。両親がスイス人のためドイツ語を話すことができるアランは幸運にもミッテルベルガーのウェイティングリストの最上位となった。ミッテルベルガー社の樽は成長がゆっくりなオークを使用しているため、年輪間が非常に細かい。それによりバローロの熟成に理想的な酸素の透過率となり、タンニンの結合が進み、早い段階から緻密で洗練された味わいとなる。余ったワインは225Lや500Lのバリックやトノーにも入れるが、これらの樽は少なくとも4-6年使用されたものを地元の信頼できるワイナリーから購入しており、木材からの風味の影響はほとんどないようにしている。熟成期間中、ワインは年に1回、あるいはそれ以下の頻度でラックされることが多い。32-34ヶ月間の熟成を経た後、ワインは瓶詰めの準備のために大きなステンレスタンクに移される。ボトルの一貫性を確保するため一日でヴィンテージ全体を瓶詰めし、ワインはフィルターも清澄も行わない。
2019年ヴィンテージからはランゲ・ネッビオーロも生産している。30%分だけ知人からネッビオーロを購入し、基本的にはバローロと同じ製法を採用しているが、ステンレスタンクで発酵を行い、マセレーションは10-12日と短めで、樽で14-16カ月間熟成させる。
「飲むまでに長く待たないといけないようなバローロは造りたくない。僕は今年60歳になるからね。これ以上生産量を増やすつもりもないし、自分の好きなワインを大切な友人に届けられたらそれで幸せなんだ」
アランは笑って話す。アランは多くの偉大な生産者の下で働いてきた。そのワインを飲めば、彼もまた偉大な生産者のひとりであることに異論を唱える人はいないだろう。自分の好きなワインを大切な人のために真剣に造る。そんな人生をとても楽しんでいるアランの目は輝いていた。
(以上、輸入元情報を基にエッセンティアにて編集。転載の場合は必ず引用元を明記のこと)