[造手] Nikolas Juretic / ニコラス・ユレティッチ
[銘柄] Waldo / ヴァルド
[国] Italy / イタリア
[地域] Friuli Venezia Giulia / フリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州
[品種] Friulano 50%, Malvasia Istriana 25%, Ribolla Gialla 25% / フリウラーノ, イストリアーナ・マルヴァジア, リボッラ・ジャッラ
[タイプ] オレンジ / 辛口 / ミディアムボディ
[容量] 750ml
<銘柄エピソード:Edited by essentia>2023VT
樹齢の高い畑での混植混醸のワイン。すべての品種を同時に収穫することで、異なる成熟度のブドウが収穫でき、フレッシュさと熟度のバランスに優れたワインとなる。長くはないマセラシオン期間でもこれだけの色が抽出されることからブドウの成熟度の高さが分かる。
Montのワイン名変更に伴って
Grande WaldoもWaldoに変更となった。南向き斜面のためMontよりも暖かい畑。フレッシュさが特徴的な2023年ヴィンテージにおいて、その温暖さの恩恵を受けていると感じる。
<輸入元テイスティングコメント:Edited by essentia>2023VT
熟した桃などの果実、柑橘、花のアロマに加え、グリーンがかった火打ち石を思わせるミネラルの印象。熟した果実味と高いフレッシュさが調和しており、奥行きとエネルギーを兼ね備えた味わい。
<栽培:Edited by essentia>
土壌はポンカ(フリッシュとも呼ばれる)。砂岩と泥灰岩で構成され石灰分が豊富で、比較的崩れやすい。そして、保水性と排水性のバランスに優れ、ブドウの根は非常に深くまで伸びる。結果的に独特なミネラル感や厚みを持つワインが生まれる。ニコラスは高樹齢のブドウとポンカ土壌の特徴を十分に表現するため、できる限りブドウの成熟度が高くなるまで収穫を待つ。ビオディナミ農法。
【畑】パラディス、ボスク・ディ・ソット
ダブル・アーチ・グイヨ仕立て、標高90−110m、南向き斜面、植密度3,000本/ha、収量35hl/ha、ポンカ土壌(石灰岩を豊富に含む砂岩および泥岩)、0.7ha、樹齢60−110年。
<醸造:Edited by essentia>2023VT
収穫は手摘みで行い、バスケットプレス。除梗せずに7日間コンクリートタンクでマセラシオンを行う。古い木樽に移し野生酵母を使用して発酵。そのまま自然にマロラクティック発酵を行い11ヶ月オーク内で熟成させる。無濾過無清澄で瓶詰め。10ヶ月の瓶内熟成を経てリリース。【アルコール度数】12.5%【年間生産量】3,200本。
<ストーリー:Edited by essentia>
フリウリのライジングスター
イタリアのフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州、スロヴェニアとの国境付近に位置するコルモンス。ニコラス・ユレティッチはこの町で2018年からワイン造りを開始した。2020年ヴィンテージが世界一のレストランとして知られるデンマーク・コペンハーゲンのノーマにバイ・ザ・グラスで採用された。生産本数が約5,000本と限られているが、そのクオリティの高さに一躍注目を集める存在となった。たびたびメディアで「フリウリのライジングスター」と紹介される彼だが、その彼の根幹となっているのが剪定のプロフェッショナルとしてブドウ樹と向き合ってきたその経験だ。
ブドウ樹剪定のプロフェッショナルとしての経験
ニコラス・ユレティッチはイタリア・フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州のブドウ栽培農家出身で、幼いころから家族のワイン畑で多くの経験をしてきた。学校で芸術と醸造学を修め、卒業後は地元コルモンスのいくつかのワイナリーで働いていた。しかし、そこでは様々な化学物質を使用してワインを修正し調整していた。
「創造性や調整の余地はまったくなく、指示に従ってレシピ通りに働くだった。」
とニコラスは当時を振り返る。その後ニコラスが居を移したオーストラリアはまったく逆で、ワイン産地としての歴史が浅いがゆえに常に議論や実験の余地があり、それがニコラスにとっては大きな刺激だったという。2013年に故郷に戻り両親のブドウを使用してワインを造ってみようと決心する。
「帰国して数週間後の日曜日の朝、馬に乗っているときに偶然マルコ・シモニットに出会い、彼が仕事をオファーしてくれた。ブドウ樹の剪定のプロフェッショナルとして彼の会社(シモニット&シルク)は急速に成長していて、彼のコンサルティングとトレーニングの需要が非常に高かった。すぐにこの機会を試してみようと決心し、ワインを作るという願いをしばらく脇に置くことにした。」
こうしてニコラスはシモニット&シルクと共に世界中を旅することになる。
高樹齢のブドウとポンカ土壌を活かした彼だからできるアプローチ
2018年、ニコラスは家族のブドウ畑やコルモンスの樹齢の高いブドウ畑を手に入れ、念願の自身のワイン造りを開始。大昔海であったコルモンスを含むコッリオ地域では、ポンカというこの地域独特の土壌が見られる。ポンカはフリッシュとも呼ばれ、砂岩と泥灰岩で構成され石灰分が豊富で、比較的崩れやすいという特徴がある。ポンカ土壌は保水性と排水性のバランスに優れ、ブドウの根は非常に深くまで伸びる。結果的に独特なミネラル感や厚みを持つワインが生まれる。ニコラスは高樹齢のブドウとポンカ土壌の特徴を十分に表現するため、できる限りブドウの成熟度が高くなるまで収穫を待つ。
「温暖化に伴い、フレッシュさを保つために収穫を早めるという話をよく聞くけど、僕はブドウ畑でのアプローチを変えることで土壌やブドウ樹をフレッシュに保つことができ、フェノリクスが適切に成熟するまでタイミングまで収穫を待つことができると考えている。」
ブドウ樹選定のプロフェッショナルとしての経験が豊富だからニコラスだからできるアプローチ方法だ。
生産者ストーリー【伝統と革新、それらを最高のバランスで表現する唯一無二の生産者】
ワインの生産者訪問をしていると家やセラーに他のワイン生産者の空き瓶が飾ってあることがよくある。その生産者の好みや目指すスタイル、友人関係などを知るのに役に立ちとても興味深い。DRC、ルロワ、アルマンルソー、セロス、オヴェルノワなど、多くのワイナリーでトップ生産者のボトルを目にしたが、そこに並んでよく見かけたのが青いラベルに一本の木が描かれた水彩画のようなスタイリッシュなボトルだった。あまりにもよく目にするのであるブルゴーニュの生産者を訪問した際に聞いてみた。すると、
「彼はニコラスと言って、ブドウの仕立てや剪定のプロで色々なところで生産者向けに講習を開いているんだ。そしてこれは彼がフリウリで自ら造っているワイン。素晴らしいワインだよ。」
ニコラス・ユレティッチはイタリア・フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州コルモンスのブドウ栽培農家に生まれ、家族のブドウ畑での経験を通じて早くからワイン造りに親しんできた。彼は美術と醸造学を修め、その後、世界各地のワイナリーで経験を積んだ。なかでも彼に大きな影響を与えたのがシモニット&シルクというイタリアを拠点に活動し、“Vine Master Pruners(ヴァイン・マスター・プルーナーズ)”と呼ばれるブドウ樹の仕立てや剪定に特化したグループでの経験だ。シモニット&シルクはマルコ・シモニット(Marco Simonit)とピエロ・シルク(Pierpaolo Sirch)の二人によって設立された。彼らは1980年代からブドウ樹の剪定に携わり、伝統的な技術を現代的にアレンジすることで、ブドウ樹の寿命を延ばすことに成功。彼らのアプローチは、ブドウ樹が持つ自然の成長パターンを尊重し、植物の健康を保ちながら高品質なブドウを生産することを目指している。彼らの手法は、ブドウ樹に過度なストレスを与えず、樹液の流れをスムーズに保つことで、樹木内部の健全な組織を維持することに重点を置く。また、剪定の際に行う切断面をできるだけ小さく保ち、感染症のリスクを最小限に抑えるよう工夫されている。こうした彼らの活動は世界中の著名なワイナリーに賛同を受け、多くのワイン産地で採用されている。また、彼らは教育活動にも力を入れており、世界各地でワークショップやセミナーを開催し、次世代のブドウ栽培者に技術を伝えている。ニコラスもシモニット&シルクの一員として10年、世界各地を巡り、剪定技術の講習やワークショップを行っている。
2018年、ニコラスはコルモンスの旧市街にある小さなセラーを借り、自身のワイン造りを開始。彼は家族のブドウ畑で育てられたブドウや地域の樹齢の高いブドウ樹の区画を購入またはレンタルし、オーガニックおよびバイオダイナミック農法に基づいた栽培を行っている。
「樹齢が50−110年という素晴らしい畑を入手することができた。とても幸運だ。その素晴らしいブドウを活かすのにはセラーよりも畑での仕事に注力しなければならない。畑の自然な生物多様性を保つために草刈は行わないし、カバークロップの植樹も行わない。畑に生えているのは自然に育ってきた植物なんだ。また畑の周りには多くの果物の樹がある。それによって畑に影を作り涼しさを保ってくれるんだ。」
とニコラスは自身のブドウ栽培のアプローチを説明する。直接日光を防ぐため除葉は一切せず、ブドウは全て日陰で成熟させる。それによりブドウはゆっくりと成熟し、十分なフェノリクスを蓄えることができる。
「収穫を遅らせることはブドウの糖、最終的なワインのアルコールが上がりすぎてしまう可能性はあるけど、それは心配してないよ。十分に熟してから収穫することによってインテンシティや複雑性を持ち、この土地を十分に表現したワインができると思うんだ。それに最終的に僕のワインはいつもバランスの取れたアルコール度数になるんだ。」
また、収穫を遅らせることによって他にもメリットがあると語る。
「日陰でブドウをゆっくり成熟させることで、フリウラーノの一部のブドウではボトリティスの影響を受ける。それにより複雑性を増すことができるし、僕はそのスタイルが好きなんだ。」
フリウラーノはフランスではソーヴィニヨン・ヴェール(ソーヴィニヨンナッセ)と呼ばれ、遺伝子的にはソーヴィニヨン・ブランと同じ遺伝的系統に属する。そのため、ソーヴィニヨン・ブラン同様にボトリティスに親和性を持つ。
「収穫のタイミングに関しては糖度計や酸度など科学的な分析を一切行わずにブドウを実際に食べて決める。ブドウの状況はブドウ自身が語ってくれる。だから科学的な手法に囚われすぎず自分の感覚を大切にしているんだ。」
ワイン醸造に関してはフレッシュさと複雑さのバランスの取れたスタイルを目指し、過剰に酸素に触れさせる長期マセラシオンよりも短期間のマセラシオンやカルボニックマセラシオンを好む。
「この地域には、スタンコ・ラディコンのような長期マセラシオンを行い素晴らしいワインを造る偉大な生産者がいる。実際に僕も彼から色々なことを教えてもらっているし、彼のワインは大好きだよ。でも自分自身が目指すスタイルは少し違うんだ。ブドウ自体の特徴、フレッシュさを保ちつつ同時に十分なフェノリクスの成熟に由来する複雑さ、そのバランスを大切にしたい。」
実際にフリウリでは過去30年、フレッシュさを特徴とするワインを造るため、それまで主に使用されていたコンクリートタンクからステンレスタンクが主流になってきたが、ニコラスは伝統的なコンクリートタンクと古樽のみを使用している。ニコラスの借りているセラーにあったコンクリートタンクは壁が非常に厚く、それにより自然な温度コントロールができ、発酵途中でも一定の温度に保つことができる。
「フリウリは同じ州でもステンレスタンクを使用した非常にフレッシュなスタイルと、長期マセラシオンを行い酸化による複雑性を伴うスタイルがどちらも存在するユニークな地域だと思う。僕自身はその中間を目指しているんだ。フレッシュさと複雑性が共存したワインを造りたい。」
彼のワインを飲めばその言葉の意味がよく理解できる。
(以上、輸入元情報を基にエッセンティアにて編集。転載の場合は必ず引用元を明記のこと)