Cantina Giardino / カンティーナ・ジャルディーノ

<後から気づいた魅力>

彼らと知り合ったのは2006年のヴィッラ・ファヴォリータ(アンジョリーノが主催するサロン)でした。この年、衝撃デビューを果たしたパーネヴィーノのブースの隣にいた彼ら。凄く好奇心が旺盛で、なぜか日本語の文章(ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベットを混在させて文章を構成すること)などの話をしました。

ワインは、美味しいには美味しいと思った記憶があるのですが、彼らの赤のトップキュベ、ヌーデは木が強くてブドウの本質を見極めづらかったというのが本音でした。とはいえ、この頃からアリアニコというブドウにそれほどの魅力&高い潜在性を感じてなかったのは、ひょっとしたらブドウそのもののせいではなく、飲んできたワインのせいなのでは?と思うようになりました。2007年、2008年にヴィッラ・ファヴォリータで試飲するうちに、ようやくアリアニコというブドウのポテンシャルにも気付かされ、2008年から取引を開始。

<使命感が生まれるとき>

ヴィナイオータのラインナップの中でも異色中の異色な彼ら、なんとブドウ畑を全く持たずに、借りもせずに買いブドウだけでワイナリーをスタートさせてしまうんです!

エノロゴ(醸造家)として大手ワイナリーで働いていたアントニオ・デ・グルットラは、家族や友達のためのワインを買いブドウで自家醸造をしていました。その量も半端ではなく、毎年2000本程度は造っていたという話です。アントニオ達の住む、アリアーノ・イルピーノという町の主要農産物は穀物とオリーヴで、ブドウ畑はあまりなかったため、30-40km離れたタウラージの生産地域の農家までブドウを買いに行っていました。

<カンパーニャ内陸の農業の現状>

このゾーンに通い、様々な農家を訪ねていく中で、生産効率、収量などをあげるために樹齢の古いブドウ樹を抜いてしまい、新たに畑を仕立て直す農家が多いのを目の当たりにします。

タウラージやアヴェッリーノ周辺の地域では、ラッジエラ・アヴェッリネーゼ(Raggiera Avellinese)という名の仕立てが伝統的に採用されてきており、(この地域に残る)高樹齢の区画は大体この仕立てによるもの。

上から見ると樹が十字に広がるように見えるのですが、実は2本のブドウ樹を至近に植えてあり、1本の樹から┛のように2方に枝を伸ばし、もう一方を┏のように伸ばすように誘引しています。非常に面積を必要とする仕立てなので、新たに畑を作ろうという人で、この仕立てにする人はまずいないのではないでしょうか。昔はブドウ樹の下は下で野菜畑として利用していたのだと思います。

大体の農作業を手で行っていた、トラクターなどの農業機械が存在しなかった時代にはこの仕立てで良かったものの、効率を重視した現代的な農業を実践する上では理想的とは言えない・・・。農家としては収穫量で収入が決まりますから、一定の面積からできるだけ多くの量を収穫したいと考えるわけです。そして、畑をトラクターが導入しやすい仕立てに切り替えることが奨励されているという事もあり、多くのブドウ栽培農家は高樹齢の樹を抜いてしまうという現状があります。“奨励されている”というのは、“補助金が出る”と同義なのは日本と一緒。畑を仕立て直してもらえば、苗業者も農業資材&機械業者にもビジネスチャンスが生まれるわけで・・・。

ちなみにですが、新しく畑を作る際に前述のラッジエラ・アヴェッリネーゼを採用すると、補助金が出ないそうです・・・恐るべし。高樹齢のブドウの樹は、年を追うごとに収量も少なくなりますし、当然のことながら天に召される樹も出てきますので、ブドウを売って生計を立てる農家からしてみたら、とても魅力的な話に聞こえるわけです。

<生きる文化遺産を守るため>

アントニオ達も彼らの気持ち、事情は十分に理解できるのです。しかし、樹齢の高い樹からは樹齢の若い樹がどう頑張っても真似できない品質の、凝縮性の高いブドウが獲れる。一度抜いてしまって、新しく作り直したブドウ畑が再び高樹齢と呼べるようになるまでには、当然のことながら何十年という時間が必要です。

そんな生きる文化遺産とも言える高樹齢ブドウ樹を、その重要性に気付いている俺たちが守らないでどうする!守るためにはどうすることができるか?それは農家から、高樹齢の樹から獲れるブドウを付加価値(重量でなく、品質にお金を払う)をつけて買うこと以外にない。それをある程度意味ある活動にするためには、自家消費用程度を造っているようでは駄目で、商品として醸し、売り、ワインの品質(=ブドウの品質)を消費者に評価してもらい、農家を勇気づけ、彼らのモティベーションとなり、噂が伝播し、結果、より多くの農家を巻き込んでいかなければならない。

というわけで、そういった状況を傍から見ていたアントニオ&ダニエラ。 さらに4人の仲間が集まり、合計6人で出資し、ワイナリーを始めます(正式には2003年に誕生)。 失われつつある高樹齢の区画を守る手段として、信頼の置けるブドウ栽培農家から市場価格よりも高額で買い付け、そのブドウを用いて自らワインを醸すことにします(この時点では、若い彼らにとって、タウラージ生産地域の畑は高く、高嶺の花でした)。

<農家が変わり幸せが増える>

アントニオ達はそんな高樹齢の畑を守るために、市場価格より遥かに高い金額で農家からブドウを買い上げます。取引する農家は当然のことながら、もともと自然環境にリスペクトを払った農業を行っていたところばかりなのですが、そんな彼らに草生栽培や無肥料での栽培など、さらに踏み込んだ農法を依頼し、より高品質のブドウを生産してもらっています。

そしてこれがまた凄いのですが、それまでは生産したブドウを売っていただけの農家たちは、アントニオの醸造面、マーケティング面での援助により、自らワインを生産し、ボトリングするまでになっていて、双方にとって有効かつ建設的な関係が築かれているのです!タウラージのゾーンはかつて、大規模生産者だけがボトリングを行って(ブドウを買い上げて醸造する、もしくはワインを桶買いして)いました。

農家は大手ワイナリーと直接契約するか、仲買人にブドウを売り、自家消費用のワインだけを自ら醸造していました。その仲買人は大手ワイナリーや、ナポリなどの大都市の市場にブドウを卸していたといいます。つまり、ナポリの市場で、”ワイン用ブドウ、アリアーニコあります”みたいな感じでつい最近まで普通に売られていたんです。近年では、農家が自らボトリングを始めるようになってきていて、そのワインの品質には目覚しいものがあります。

カンパーニア州の生産者、イル・カンチェッリエーレとルイージ・テッチェも、アントニオの後押しでボトリングを始めた造り手になります。

<アンフォラまで自作>

醸造面では、アントニオの醸造家としての知的好奇心を満たすべく、様々な試みがなされています(あくまでも自然な手法で)。白ワインにも醸し醗酵(皮ごとの醗酵)を行い、キュベによっては酸化防止剤も完全無添加でボトリング、そしてアンフォラ(テラコッタの壺)での醸造。

このアンフォラ、知り合いの陶芸家と一緒に自分で作ったそうです。

ジョージア(グルジア)のあたりでは、アンフォラを地中に埋めて醸造していたのですが、この辺りでは小さめの壺を地中に埋めることなく醸造していたそうです。彼らの場合は、除梗して軽く潰したブドウをアンフォラに入れ、蜜蝋で封をして6ヶ月放置、圧搾し、大瓶でしばらく寝かせてからボトリングする手法を採用しています。

<さらなる発展を目指す畑>

恐らく年間10,000本程度は生産しているのだと思うのですが、それだけでは生活できないと彼らは言います。買いブドウで、なおかつそれに高額のお金を支払っているため、本来もう少し価格の設定を高くしなければいけないのですが、それではますます訴求力に欠けてしまい、伝統(畑)を守るという本来の目的を最小限でしか実現できない。なので、利益はあまり取らずに、その利益もワイナリーの投資に充て、そして生活のベースを得るために、アントニオは化学の非常勤教師をし、ワイナリーの投資者でもある彼の奥さんダニエラと彼女の弟は親戚の営むガソリンスタンドで働いたりしています。

彼らの農家をフォローしようとする活動は本当に素晴らしいし、ワインも個性的(そしてラベルも)で、凄く美味しい、だけど心を揺さぶるものに欠ける気がしていて、それが何なのか薄々気が付いていました。そんな時に彼らから素敵なニュースが(2019.5.3時点)。ついに5ヘクタールの畑を買い、その中にはなんと樹齢100年の樹の植わっている区画もあるとのこと!

僕が全幅の信頼を置く造り手の多くが、良いワインを造るための仕事の8-9割は畑で完結していると言います。つまりセラーでできること、やるべきことは、畑に比べると極僅か。だとするならば、買いブドウ(もちろん品質の良いものではありますが)であそこまでの品質を実現できるアントニオ達が、自らブドウを育て、魂をブドウに込めることができたら、どれほど凄いことになるか!考えるだけでわくわくしてきます!

そんな彼らのワインですが、初リリースから10数年経った現在、20カ国以上で楽しまれるまでに!その中でも、彼らのワインの最大の消費国にして、唯一全アイテムが揃う国というのがこの日本なんです。

ピエモンテやトスカーナなどの銘醸地とされている地域ではない、南イタリアのぽっと出の小さなワイナリーのワインが、イタリアから遠く離れた、ワインの消費量が決して多いわけではない極東の国でどうしてここまで愛飲されるに至ったのか?

もちろん“美味さ”や“個性”などワインが持っていた特性、品質も大事な要素だったのだろうけど、その味わいの向こう側にある造り手の想い、エモーション、哲学、生き方さえも汲んでくれた“ヒト”がいたからこそ、ここまで愛飲されているのでは??そして、愛飲してくれている“ヒト”たちが持つ文化、伝統、思想も、文化や伝統を体現したワインを真に理解し、賞賛するに至る大きな要因の一つとなっているのでは??? (以上、2017.3.13と2019.5.3のヴィナイオータ・太田氏の文章より抜粋・要約・加筆)

カンティーナ・ジャルディーノ

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